掛け算九九を習う小学校2年生が運命の分岐点とも言える重要な時期なんですが、あまりこのことは意識されていません。親たちにも!
どうして算数・数学は苦手になるの?
中学生や高校生の勉強を見てきた経験で、その親からこのように言われることがよくあります。
高校(中学、あるいは学年が)に上がって数学が急に難しくなったようで・・・どうすればいいんでしょう・・
経験上、小学校の算数の習熟度に問題があることが多い。
さらに詰めると、掛け算九九を親が子供にどれだけ厳しく覚えさせたのかに収束します。
『子供が九九を覚えたのか』ではなく『親が子供に覚えさせたのか』です。
当事者の子供は『数学ができるようになるなんて無理ゲーすぎる・・』とハナっから諦めていることがほとんどで、数学を勉強する気などありません。
あまりにも面倒すぎるからです。
『数学をするくらいなら、穴を掘ってそれを埋める作業をするほうがマシだ』と思っている可能性すらあります。
それは学年が上にあがるほど顕著になります。
算数・数学が苦手な子供はたいてい基礎を理解しようとしていません。
『理解していない』ではなく、『理解しようとしていない』のです。
例えば、数学が苦手な中学生に以下のような問題を解いてもらう。
(-5)×(-6)-4×(4+7÷(-8))÷7/3
これは正負の数と、計算の順序を正しく理解していることが必要で、算数・数学が苦手な子は解けない。
なぜ解けないのかというと、正負の数と、計算の順序を正しく理解していないからですが、さらになぜ正負の数と、計算の順序を正しく理解『できない』のか。
多くの場合、理解することをそもそも放棄しているのです。
この問題を考える上で、実に多くのことを考えなければなりません。
- マイナス×マイナスはどうするんだっけ?
- カッコがある場合はその中から計算?
- 分数の割り算はどうするの?
- 足し算と掛け算と引き算はどこから先に計算?
- 7÷8?どう表現するの?
- いやそもそも5×6っていくつ?
できる子にとってはこのようなことは一瞬で無意識レベルで解決されますが、できない子にとってはそうではないのです。
6つの課題のうち3つ理解していないかもしれないし、全部理解していないかもしれない。
理解していても意識的に考える必要があり、スピードが遅いかもしれない。
基礎がそれぞれ抜けている子はこれだけのハードルを超えなければいけません。
ひとつ問題を解くたびに6つのことをよく考えなければならない?
面倒臭くてやってられない、となります。
正負の数の基礎を理解する前にやる気を奪われてしまうでしょう。
その結果、面倒臭いから全て剛速球で投げ出します。大谷翔平もビックリ。
そして、答えを丸写しして宿題を終わらせるとか意味のない行為に走り、親や教師にばれて『背任罪』でつるし上げられる運命にあるわけですね。
学年が上がり、考えなければいけないことが多くなるほど、面倒臭さは上がり、算数・数学の教科書は本棚を空きスペースを埋めるためだけに存在するようになっていきます。
想像してください
誰が以下のような課題を全部理解していない状態で、数学の問題に取り組もうと思うのでしょうか。
- 関数の変域は?
- 最小値はどこであらわれる?
- あ・・微分ってどうやるんだっけ?
- それ以前にこれ展開しないといけなさそう・・・
- なんかカッコに2乗ついてるし・・・
- マイナス×プラス?マイナスひくマイナス?ややこしいな
- カッコの中から計算?
- 足し算とかけ算どっちが先?
- 約分って?
- 12×8しなきゃ
- 掛け算の筆算
- まずは2×8
こんな課題が高校の問題集には10、20個と並んでいる。やるわけがないのです。
机に向かい、勉強するふりをしてyoutubeを見ることでしょう。
私ならそうする。
算数・数学ができない人は頭が悪いのではなく、解く問題のはるか以前のどこかでつまづいているだけのことが多いのです。
そこからのサハラ砂漠の地平線を目指すかのような長い道のりを歩くのは、あまりに面倒くさいと思っているだけなのです。
小学校の算数で最初に差がつくのは掛け算九九
算数・数学ができない人はつまづいている地点まで戻って習得していかなければいけません。
名刺交換や敬語の使い方を教わっていない人が、きちんと顧客対応できないなら、それを教えるのと同じです。
そして、最初につまづく地点がどこなのかさかのぼっていくと、その根本なる一つが掛け算九九なのです。
小学校1年生で習う足し算や引き算は、数が数えられれば習得するのはそれほど困難ではなく、詰まる子は少ない。
たいていの場合この時点で生徒間で差が出ることは多くなく、せいぜいやかましく答えを言うか、もぞもぞ答えを言うかの違いくらいです。
最初の試練が掛け算九九。
1×1から9×9までの81個もの掛け算を暗記しなければならない。
その時点の足し算や引き算は両手指を折れば十分ついていけるけど、掛け算は両手両足、前後左右の助けを借りても、指折りでは対応できません。
したがって掛け算九九は暗記しなければならない。
ここで大きな問題があります。
掛け算九九を習うにあたり、子供たちは『大量の暗記』というその後の長い修行の始まりともいえる暗記入門イベントに初めて直面するわけです。
子供たちは初めての大量暗記に阿鼻叫喚、そして面倒くさがるでしょう。
まさにこの『初めての大量暗記』をきちんとやらせきることが親の重要な役割なのです。
81個の『初めての大量暗記』を子供たちが自主的にやることはまずありえません。よほどの算数好きでない限り。
そして、学校の授業や宿題程度で、81個の『初めての大量暗記』を子供たちが覚えきることもまずありえません。よほど頭が良くないかぎり。
結果、子供たちが自主的に覚えきることもないし、学校もあてにならないなら、もう親がやらせきるしかないのです。
そして、『親が掛け算九九を子供に覚えさせる』という巨大プロジェクトを完遂した家庭の子供と、そうでない子供の間で差がつきはじめる。
小学校2年生の時点のテストくらいではまだ差は見えにくい。
しかし、学年が上がるにつれその差は広がっていきます。
掛け算九九が即答できないと算数・数学は苦手一直線
掛け算九九を未完成のまま放置するとどうなるでしょうか。
まず、小学校3年生で習う割り算に苦労します。割り算は計算する際、掛け算の応用で解きます。
簡単に言えば、12÷3をする際は、3の段で答えが12になる掛け算を探し答えを出します。
つまり九九が瞬時にできなければ、割り算の最初の時点で時間がかかるようになり、子供たちは面倒くさくなっていく。
または、掛け算の筆算を習うようになる。
例えば、324×23(だいたい4年生で習うレベル)、ひたすら掛け算九九を繰り返して筆算をする。
ここでスピードが遅かったり、そもそもわからない九九があると、子供たちはどんどん面倒くさくなっていく。
これらを基礎として5年生あたりになると、『速さ、道のり、時間』の関係を習うのだが、割り算と掛け算が混ざり、考えることは多くなります。
割り算を使うのか掛け算を使うのか、それをクリアしても実際に計算をする際のスピードは?
結局掛け算九九が基礎なわけです。
三角形や長方形の面積を出すにしても掛け算だし、『比』などという概念がでてきたらもはや分数やら、掛け算やら割り算やらごっちゃになる。
いずれにせよ、掛け算九九に時間がかかっていたら、すぐに子供たちは投げ出すわけです。
親は小学2年生が終わるまでに掛け算九九を即答できるか確認するべし!
別に九九だけが重要ではなく、足し算も引き算も割り算も分数も少数も全部重要なのだが、算数で最初に訪れる困難が、『81個の暗記(苦行)』という九九なのです。
最初だから特に大事だというわけです。
そしてそれが、後続の単元、ひいては中学・高校に上がり数学の理解に大きく影響する。
頭が良い、悪いだけで算数・数学の得意不得意は必ずしも決まりません。
計算するのが面倒かそうでないか、ということも強く影響します。
小学生2年生のうちに九九が瞬時にできる必要があり、できなければ今すぐ完璧にしなければいけません。
もう5年生や6年生にもなれば、親の言うことなど聞かない子もでてくるだろうし、『今更九九?』などとできもしないのに、できる気になっていることもあり、素直に聞かなくなります。
中学・高校になればなおさら。
早ければ早いほど良い。
今すぐ九九が瞬時にできるか確認を!
親が子に課すべき掛け算九九が『できる』とはどのような状態か
掛け算九九に限らず、あらゆる教科、スポーツ、仕事にいたるまで『できる』という状態は、無意識に体が反応するようなレベルを言います。
掛け算九九に関して言えば、『いんいちがいち』から『くくはちじゅういち』まで順番に言えることが『九九ができる』とは呼ばない。少なくとも私は認めない。
突然『7×8は?』と聞かれて0.5秒で『56』と即答することを言います。
これを『えっと、しちいちがしち、しちにじゅうし、・・・しちはごじゅうろく』などと7の段を順番に言って答えを出すようではダメです。
先に述べたように、その後掛け算を使うあらゆる場面でスピードに致命的な影響がでます。それは後々『面倒くささ』を引き起こし、算数・数学に対するやる気を大きくなくします。
『えっと、しちはごじゅうろく、だから56!』でもダメ。
『56!』とシンプルに即答できなければいけません。
私の子供が小学校2年生の時にやった九九のトレーニング風景
私『ごっく?』
子供『45』
私『ごっく?』
子供『45』
私『ろっく?』
子供『45』
私『ろっく?』
子供『54』
・・・以下繰り返す・・・
私の子供は『5×9』と『6×9』で混乱していました。完璧になるまで1週間くらい繰り返したものです。
一通り『1×1』から『9×9』まで言えるようになったら、次はランダム。
私『4×8』
子供『えっと、しいちがし、しにがはち、しさんにじゅういち、・・・・しはさんじゅうにで・・32!』
私『それじゃだめ。答えだけ言って』
私『じゃあ、6×6』
子供『36!』
私『それは得意なんだな。じゃあ7×8』
子供『えっと・・・』
私『答えだけ、答えだけ!』
子供『・・・・・・・・・・・・・・56』
・・・以下ランダム・・・
ひたすらスパルタ。お風呂でもできます。
なお、九九が瞬時に言えるようになったのは3年生の最初頃で、すぐに5桁×4桁くらいまで筆算を教え込み、掛け算で困らないようにしました。身についた九九を応用で使えるようにするためです。
当塾で子供たちに教える際も、同じようにしつこいくらい繰り返します。
掛け算九九を練習するプリント作成ツール
掛け算九九はランダムに出されても瞬時に答えを言える必要があります。
そうでなければ、その後の単元で要求される計算スピードに耐えられなくなるからです。
単純な問題なので、81マスすべて掛け算九九を埋めるというトレーニングも有効です。
私はよく瞬時にできるかどうかをチェックするプリントとして下記エクセルから印刷しています。
問題がランダムに生成されるので、繰り返しに最適です。
(私の自作、使用自由、自己責任で。関数を再計算させるとランダムで問題が入れ替わります。)
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