「をかし」を「ヤバイ」と置き換えれば古文が楽しくなる!

古文が好きな人、枕草子が好きな人。

私とは住む世界が違うのですね。

そう!私は全教科の中で古文が一番苦手!

歴史が得意で好きにもかかわらず、苦手!

歴史でも文学史とかになると途端に解答欄が空白になるほど苦手!

でも最近知ったのです。

古文を学ぶことの意義が!

「1000年経っても人間って成長してないんだな・・・」ということがわかります!

1000年後の古文では「ヤバイ」の解釈で悩む受験生がいる!

もし1000年後も人間が生きていて、古文とかいう学問があって、しかも受験とかあるのなら、そのころの受験生は「受験生必読!受験に勝つ古文単語集(令和時代編)」とかいう本で「ヤバイ」の意味の暗記に悩んでいることでしょう。

そして「ヤバイ」は文脈で判断するんだ!とか教えられているに違いありません。

それはちょうど私たちが枕草子「をかし」を学ぶものと似たような状況のはずです。

なぜなら現代語の「ヤバイ」と古文の「をかし」は使い方や意味が似ているから。

枕草子の「をかし」の現代語訳って知っている?

私くらい古文が苦手で、高校の古文の授業中すべてで寝る・サボる・赤点と悪行の限りを尽くした人はそういないでしょう。

そんな私でも枕草子とその中で連呼される「をかし」という言葉くらいは知っています。

それほど古文において代表的な要素である枕草子「をかし」

他の古文単語は受験終了とともに綺麗さっぱり記憶から消去されたことを覚えています。

そもそも私が古文が苦手な原因となったのが、この「をかし」だったりします。

「をかし」は意味が多様でざっくり以下のものがあります。

  1. 滑稽だ、変だ、おかしい
  2. 興味深い、面白い
  3. 趣がある、風情がある
  4. 美しい、愛らしい
  5. 見事だ、すばらしい

他にも「をかし」にはいろいろな解釈があるわけです。

「変だ」という意味と「美しい」という意味の間にほとんど関連性がないですよね。

つまり文脈により意味を判断しなければならない。

古文はこの文脈と行間の判断が得意不得意を分けたりするのです。

「をかし」自体の意味を5個も覚えたうえで、古文を読んで文脈を読み取り、そして「をかし」の意味を判断する。

これ、とても難しいです。

現代語ですら満足にできない人がいるのに、まして古文とか・・・。

古文が苦手になるのも道理だと思いませんか?

「をかし」の活用形って知っている?

まだまだつまらない勉強ですよ?

古文には活用形ってありますね。現代語にもありますけど。

「をかし」も活用形が当然あって、形容詞であるため種類も豊富。いわゆる「シク」活用。

未然形をかしく・をかしから
連用形をかしく・をかしかり
終止形をかし
連体形をかしき・をかしかる
已然形をかしけれ
命令形をかしかれ

こういうことを覚えるのも古文を面倒なものにしているような気がする。

若者言葉の「ヤバイ」の現代語訳って知っている?

話は変わり、現代語に「ヤバイ」という言葉があります。

若者言葉とされていますが、おじさんおばさんも普通に使っています。私も主にテストで時間が無くなりそうなときに「やばい」とか言ったり思ったりします。

便利ですよね。「ヤバイ」。

さて、ヤバイの意味って考えたことありますか?

それこそ文脈における解釈ですね。

ざっくり以下の意味が考えられます。

  1. 滑稽だ、変だ、おかしい
  2. 興味深い、面白い
  3. 趣がある、風情がある
  4. 美しい、愛らしい
  5. 見事だ、すばらしい

もちろん、「ヤバイ」の意味はこれだけではありませんが、だいたい「をかし」に含まれる意味はなんでも守備範囲なことが分かるようにしています。

1、「滑稽だ、変だ、おかしい」の意味で使う「ヤバイ」

あいつの服、なんか見慣れない柄でヤバクね?

予想外の出来事や見慣れない出来事、常識外の出来事に出会った際に発せられる「ヤバイ」です。

2、「興味深い」の意味で使う「ヤバイ」

この本読んでみな!マジでヤバイよ!

割と好意的な意味で使う「ヤバイ」です。

3、「趣がある、風情がある」の意味で使う「ヤバイ」

(富士山の山頂に上り景色を見て)うわ・・ヤバッ!

思わず口から漏れてしまう「ヤバイ」ですね。何かいい景色を見たシーンを想像してください。

4、「美しい、愛らしい」の意味で使う「ヤバイ」

(お気に入りの異性を見つけて友達に)うわ!あの人マジヤバイんだけど!

街に出て、中高生の心の中をのぞけるとしたらこんなのばっかりかもしれません。

5、「見事だ、すばらしい」の意味で使う「ヤバイ」

(部活の大会ですごい選手を見つけて)うわ!あの人マジヤバイんだけど!

これが対戦相手だったりすると、絶望混じりな「ヤバイ」になるわけですね。日本語って難しい。

「ヤバイ」の活用形って知っている?

「ヤバイ」も立派な形容詞なわけですから、活用形があるわけです。

「ヤバイで覚える5段活用」とかいいですね。

未然形ヤバかろ
連用形ヤバかっ・ヤバく
終止形ヤバい
連体形ヤバい
仮定形ヤバけれ

「をかし」と「ヤバイ」は古文と現代文にある便利語!

このように「をかし」と「ヤバイ」には共通点が多い。

1000年の時をえて変わったことと言えば、文字と発音くらい。

現代人が「ヤバイ」「ヤバイ」と連呼しているように、1000年前の人たちは「をかし」「をかし」言っていたのかもしれません。

「をかし」を5つの意味を持つ、英単語みたいな暗記が面倒なもの、文脈で判断するとかいう面倒なものという風に考えると古文が難しいものになってしまいます。

一方、私たちは「ヤバイ」という言葉を自然と解釈しているはずです。

ここはひとつ「をかし」を「ヤバイ」に置き換えてみてはどうでしょうか。

「いとをかし」の「いと」というのも「とても」という意味がありますが、現代語で「とてもヤバイ」とか言いませんよね?

そう!「いとをかし」も「マジヤバイ」でいいのです。

「をかし」を連呼する枕草子を「ヤバイ」を連呼する「枕草子」に変えてみる

試しにかの有名な枕草子、古典の代表格ともされるなんだかとっつきにくそうな枕草子も「ヤバイ」訳してみましょう。

原文

夏は夜。
月の頃はさらなり、闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。
雨など降るも、をかし。

「をかし」を「ヤバイ」に変換

夏は夜。
月の頃はさらなり、闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、ヤバイ
雨など降るも、ヤバイ

現代語訳

ここでの「をかし」は文脈からして夏の夜のホタルなどが舞う風景を見て感嘆している様子、つまり「風情がある」とかそんなところなのでしょうが、こういうことを考える前に「をかし」つまり「ヤバイ」以外の言葉を現代語にしてみましょう。

夏は夜。
月が出ていればもちろん、闇夜でも、蛍がいっぱい飛び交っている様子。
また、ほんの一つ二つ、ほのかに光っていくのもヤバイ
雨の降るのもヤバイ

ちょうど良い風景を見て「ヤバ~~~」と感じているのがわかります。

あとは「ヤバイ」にあう、もう少し上品な言葉に変えればいいわけですね。

「ヤバイ」を批判する人が「をかし」を批判しない不思議

「ヤバイ」という言葉は便利すぎて、なんでも「ヤバイ」で済ませることで語彙が貧弱になるとかいう、偉そうな方たちの批判があります。

確かに「ヤバイ」さえあれば、他の形容詞は知らなくてもいいのではないかと思えるくらい便利な言葉です。

あらゆる感情表現に「ヤバイ」を使っても実際通用してしまいそうですからね。

しかしこれまで見たように「をかし」も大概に便利な言葉です。

あらゆる感情表現を「ヤバイ」の代わりに「をかし」と言ってもまあ通じるわけですよ。

何が言いたいのかというと、便利な言葉、それこそ「語彙を貧弱にしてしまう」かもしれない言葉なんて1000年前にもあったのですよ。

枕草子が多くの感情表現に「をかし」を連呼しているわけですから。

まあ枕草子ひとつ取りあげて「昔の人もをかしをかしばっかり言っていた」というのは乱暴かもしれませんが、いつの時代もそんな言葉はあるわけです。

おそらく1000年前のお偉いさんたちも「最近の若者はをかしをかしばかり言って、言葉が乱れている!」なんて言っていたのかもしれません。

つまり昔から人間ってそんなに成長してないんじゃないかとも思えるわけです。

だから偉そうに「語彙が~」とか「美しい言葉が~」とか言っても多分解決しない問題だし、そもそも語彙って「ヤバイ」ばっかり使っているから貧弱になるのではなく、語彙がないからヤバイばっかり使うのだし、語彙があってもヤバイばっかり使っていることもあるのですよ。

語彙がないのは単純にいろいろな言葉に触れていない、勉強していないだけなのですよ。

「ヤバイ」のせいじゃないわけです。

枕草子を書いた清少納言だって語彙がないから「をかし」「をかし」書いたわけではないでしょう。

結論は語彙がないなら「勉強しろ!」